春なのに雨が多く
少し気が滅入ってしまいます…。
以前、イルカのトレーナーをしていた頃、
毎日のトレーニングは楽しくも、難しくもあるものでした。
一つの種目を完成させるには
毎日の地道なトレーニングの積み重ねです。
言葉が通じない動物。
アクションで意思を伝え、
「このやり方でどうかな?」「惜しい!あと少し!」
「そうそう!そんな感じ!」と会話をしているようでした。
トレーニングがテンポ良く進む時は“やめ時”というのも大切で
調子がいいからまだまだやりたいけど
今日はここまで!と見極めるのも重要な判断のひとつでした。
しかし、うまくいく日ばかりではなく、
何をやってもダメな時ももちろんあります。
一つの方法で伝わらないなら別の方法で。
算数の答えが一つでも、その解き方に色んな数式があるように
完成までに色んな方法で導いてあげるのが
トレーナーの役割です。
それでも伝わらないものは伝わらない。
「こういうことを伝えたかったのに
どうしてそう捉えちゃったかなァ…」」
それはこちらの伝え方次第なんですが、
会話ができてる!と有頂天になる日もあれば
言葉の通じない動物との壁が果てしなく高く感じる日もありました。
華やかなショーの裏は
そんな地道な努力の積み重ねの毎日でした。
教える方が教えられる。
調教師の世界も、もれなくその通りでした。
全てはお客様にお披露目するため。
しかしそれがゴールではなく、
完成したパフォーマンスを
ショーの中で、同じレベルを維持すること。
それが一番難しいのかもしれません。
そのためには日々、トレーナーが
ショーのレベルを見極めるセンスが必要です。
それもトレーナーの大切な役目。
以前、
「挑戦する勇気より、
始めたことを維持する方が難しい」
という言葉を聞いたことがあります。
確かにその通りかも。
司会のお仕事も、
たくさんの反省の中に、時々の満足。
その時々の満足が大きなやりがいです。
天気のぐずつく春だからでしょうか。
昔のことを振り返り、
また前を向くきっかけになりました。
若杉ゆきこ